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世界的現代美術作家は文字盤の「8」に何を込めたのか?──「ブルガリ オクト フィニッシモ 宮島達男 日本限定モデル」

芸術家、宮島達男の作品はデジタルカウンターに表示される数字の連続性、無限性が特徴だ。bibiコピー 知恵袋そこにアナログの“時刻”がくわわったブルガリとのコラボレーションでなにが生まれたのか。

時間とはなにか、数字とはなにか

子どものころ、マッチ棒を使ったクイズがあった。マッチ棒で数字、数式を作り、何本動かして正しいものにせよ、といった類のクイズ。いま思えば、あれはアラビック数字のデザインの面白さ、深遠さというものをわかりやすく伝えてくれていたような気がする。

宮島達男は、そんなアラビック数字に魅せられた芸術家だ。1980年代からLEDのデジタルカウンターを使った作品、インスタレーションを発表。「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」 という3つのコンセプトをもとに、変化し続ける1から9の数字によって、生と死、時間、ライフサイクルの連続性や永遠性を表現している。

「人類は、数字を発明したことによって、時間を認識できるようになったんです」

そう語る宮島が腕時計のデザインを手掛けたのは、必然だったかもしれない。さまざまな世界的アーティストとコラボレーションをしてきたブルガリが発表した「ブルガリ オクト フィニッシモ 宮島達男 日本限定モデル」コレクションは、時間とはなにか、数字とはなにかを常に問いかけてくるような、メッセージ性をもっている。

「僕にとって時間=時刻ではありません。だから時計というものを特別に意識したことも、身につけてきたこともありませんでした。でもブルガリがこれまで手掛けてきたコラボレーションを見て、面白いことができるのではないかと思い、チャレンジすることにしました」

永遠、無限を意味する『8』

八角形の幾何学的なフォルムをもつ「オクト」に対し、宮島は文字盤の真ん中に「8」を置くデザインを提案した。

「八角形の時計ということもあり、永遠、無限を意味する『8』がいいのではないかとすぐに思いました。そのほかの細かいデザインについては、ブルガリの方が『まかせてくれ』と(笑)。じっさい、完成した時計を見たら、見事な“作品”になっていました。腕時計という時間を知るための道具でありながら、美しさを極めている。まさにアートだと思います」

とくに驚くのは、限定3本のミニッツリピーターモデル。8にあわせてくり抜かれたダイアルからは、ごく精密なムーブメントの動きが見え、プッシュボタンをおすと美しい音色が時刻を伝えてくれる。3.12mmと極薄の「オクト フィニッシモ」のケースのなかで、このくり抜かれたダイアルが共鳴板の役割を果たしているという。

「極薄のケースのなかでこれだけ精密に動く機械が存在するということに驚きますし、機械式時計が“小宇宙”といわれる理由もわかりました。3.11以降、デジタルとアナログの世界がどんどん近づいているように感じていました。このコロナ禍もそう。そのふたつの境界線が曖昧になり、そこに新しい世界が生まれつつある。この時計も、デジタル数字がデザインされていながら、その中身は世界最高峰のアナログ技術が使われている。時計を見るたびに、いろいろなことを考え、想像の翼が無限に広がる、すばらしいマリアージュになったと思います」

これまで腕時計を使ってことなかった宮島氏もこの時計は身につけることを考えているそう。

「美術館で見るようなアート作品が自分の手首にあるというのは、面白いんじゃないかと思っています。見るたびにこちらを触発してくれるんじゃないかと。ウィリアム・ブレイクの詩に『掌に無限を乗せ、ひとときのうちに永遠を感じる』という一節がありますが、まさにそんな腕時計が完成したのではないかと思っています」

素材はチタンやセラミックであり、光り輝く石がちりばめられているわけではない。しかし、その腕時計が伝えてくるメッセージは、じつに意味深い。アートを身につけて歩けば、人生の景色も少し見え方が変わってくるのかもしれない。

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